プランターの中の世界

今年もベランダで野菜を育てている。

ピーマン、キュウリ、そしてトマト。

バジルとミントも少々。

どれも夏野菜の定番だけれど、毎年のように思うことがある。

どうも我が家の野菜たちは、盛夏を迎える前に一度元気をなくしてしまうのだ。

我が家は二階のベランダ栽培。

狭いベランダ一杯に広がっている。

風通しは良いが、地面に植えることはできない。必然的にプランターで育てることになる。

最初の頃は、上手く育たない理由を自分の管理不足だと思っていた。

水が足りなかったのか?

肥料が足りなかったのか?

剪定が悪かったのか?

そんなことばかり考えていた。

ところが何年か育てているうちに、少し違う見方をするようになった。

もしかすると、野菜たちにとってプランターという環境そのものが、思っている以上に過酷なのではないか?

そんな風に思うようになったのである。

少年の心を持つピーマン

ピーマンなどは、その典型かもしれない。

春先は本当に元気がいい!

どんどん枝を伸ばし、花を咲かせ、次々と実を付ける。

見ているこちらが嬉しくなるほどだ。

だが、ある時期から急に勢いが落ちる。

今年もそうだった。

その様子を眺めながら、ふと思った。

もしピーマンに意思があるなら、どんな気持ちだろう?と

「よっしゃ、いっちょ頑張るぜぇ~!」

「どんどん根を張っちゃうぜぇ~!」

「ビッグになったるぜぇ~!!!」

そう意気込んで根を伸ばしたら、突然。

「あれ? え? なに?」

「行き止まり?…なに?壁?」みたいな。

地面に植わっているつもりで成長していたら、そこは限られたプランターの中だった。

少し可哀想だが、どこか人間らしくもある。

お前は…企業に入社して、その意識も高く全身全霊で業務に邁進した新入社員か?

張り切りすぎだ…

落ち着け…と。

小学生ばりに、マラソンなのにスタートダッシュを決め込んでくるアレだ。

そんな勢いで仕事抱え込みすぎて、夏休み前にはすっかり元気がなくなっている。

まぁ、若さとは、得てしてそんなもんである。

キュウリよ…お前もか…

今年のキュウリも苦戦している。

最初はこちらも勢いよく芽を伸ばし葉は生い茂り、実りも立派で真っすぐなキュウリが何本も収穫できた。

梅雨明けの今は、いくつか実は付いているが曲がっている。

葉もだいぶ傷んでしまった。

正直なところ…、元気いっぱいとは…

正直、言い難い。

もっとも、梅雨時期に水をあげすぎて根腐れを起こしてしまったのは、私が原因なのだが…

それでも完全に枯れてしまったわけではない。

脇芽はまだ伸びている。

新しい葉も出ようとしている。

以前の私なら、こういう状態を見ると「失敗した」と考えていた。

しかし今は少し違う。

元気か枯れるか。

成功か失敗か。

Dead or Alive

そんな単純な話ではないのだと気づいた。

人間にも体調の波があるように、植物にも調子の良い時と悪い時がある。

葉は傷んでいる。

成長も遅い。

でも、まだ生きようとしている。

そういう状態だってある。

育てるから観測するへ

今年は収穫量だけを比べれば、あまり良い年ではないかもしれない。

それでも毎朝ベランダへ出て、葉の色を見たり、新しい芽を探したりしていると、不思議と飽きない。

育てるというより、観測している感覚に近い。

どうやら私は野菜を通して、自分の思い通りにならない世界を眺めることが好きらしい。

そして、それは人間も同じなのだと思う。

いつも元気な人はいない。

順調に成長し続ける人もいない。

調子を崩しながら、少し休みながら、それでもまた新しい芽を出す。

そんな姿を、私はベランダのプランターの中から教わっているのかもしれない。

だから今年も、もう少しだけ見守ってみようと思う。

もしかしたら収穫できないかもしれない。

でも、まだ終わったわけでもない。

そんなことを考えながら、今朝もキュウリの新しい芽を眺めていた。

ただ…。

おい、トマトよ。

お前には期待しているからな。